「………ふーん、じゃあ赤の他人のあたしと一緒にいて、しかも振り回されてる貴方は今、さぞや不愉快なんでしょうね。………ま、我慢してちょうだい」
嫌なら嫌だと言えばいい。嫌ならもっと嫌そうな顔をすればいい。
無表情な上に無言だから何考えてるのか分からないわ…と、言うアシュ。
少し意地悪く言ってみたつもりだったのだが、対するザイの反応は予想していたものと少し違った。
また無言で返されると思っていたのだが、ザイは再びこちらに振り返り………フードの内で、笑った。
………この男…笑った。
…少し不器用な、だが笑顔には違いない彼の笑みがアシュを見下ろしていた。
フッ、と小さな笑みを零し……軽くアシュの頭を撫でてきた。
ただ単に…髪に積もった雪を払ってくれただけだと思うけれど…。
「………………いいや。……思いの外……面白い。………お前といると、退屈しないな…」
…思った事をそのままさらけ出した、透明で素直な言葉だ。
何の意図も、深い意味も無い。
だが…それが逆に。
「………そんな恥ずかしい事…よく、言えるわね…」
「………恥ずかしい?………何がだ…何かしたか…?」
「………何でも…ないっ!」
このド鈍感め、と軽く蹴りを放ったが、ザイはひらりと反射的に避けた。
あ、避けられた。なんだか悔しい。無性に悔しい。
先に進むようにと促すザイの後に、アシュは膨れっ面で続いた。
真っ白なマントに覆われた大きな背中が、道を作って誘ってくれる。
「………先に先に…って…そういえば、あたし達は何処に向かっているの?」


