個人の戦いに、他人の関与は無用。
戦士としての誇りは、命そのもの。
与えられた戦いに挑み、勝つことが………………生きる証。
そんな酷な世界だ。
ザイとレトに出来ることは、他人の戦いの邪魔をしないこと。
一切手を出さず、見守ること。
「…………迂回して…先を急ごう」
ザイは少しずつ後ろに下がっていった。
……頑張れ、と心の中で静かに祈り、レトはそっと離れようとした。
―――最後に谷底を、もう一度見た途端。
視界の端に、違う影が動いているのが見えた。
「…………どうした」
「……………………………あそこ………………………まだ、人がいた」
小さく指差した下方に………………二つ…………人間の影。
応戦している狩人と反対側の端の方にいる彼等は、少し小さい別の蟲に襲われていた。
………逃げる様子からして…彼等は狩人ではない。
おぼつかない足取りで岩から岩へと移りながら蟲から逃げていた。
「………?」
…その影が、大人と子供に見えた。
……小さい子供の影はピクリとも動かず、大人はそれを腕に抱えていた。
………岩を砕きながら、迫り来る蟲の牙。
……もっとよく見えないかと少し頭を上げると……。
「―――…うっ……あ゛ああああ!!」
痛々しい絶叫が、谷底に響き渡った。


