人間とは、不思議なものだと思う。
「見て見て、あの木…実がなってるわ。葉っぱなんか全然生えてないのに、実だけあるなんて…」
「…冬季が長いこの地は陽光も差し込んでこないからな。光合成も出来ないから、自然と葉が無くなっている。…あの実には触れるな。美味そうに見える光沢は、猛毒だ。間違って食した獣の死骸を養分にしている…頭のいい木だ」
「………ふーん……………なんだか、触ろうとした私があの木よりも馬鹿…みたいに聞こえるんだけど」
「………そうか?」
「そうよ」
…気が付けば、自由を求める家出を決行してからおよそ一週間の歳月が流れていた。
当初、アシュはこの無口で何を考えているのか分からない堅物のザイと会話する、面と向かうだけでも億劫だったが。…何て事はない。
人間、慣れれば何だって出来るもので、時間の経過と共にザイという狩人の姿がよく見えてきた。
傍で観察していると、彼の人柄がじわじわと分かってきた。
こちらから話し掛けない限りは、常に無口。
道無き道を躊躇いも無くズカズカと進んで行くが、フードで隠れたその顔が時折こちらに振り返ってくる。
…ちゃんとついて来ているか、転んでいないか、疲れていないか………と、どうやら確認しているらしい。
息が上がれば、タイミング良く彼は手を差し延べてくる。
………少々粗暴で、愛想の欠片も無いが、時折紳士的な面も見せる。
(………なんだ。…狩人も…結構、人間が出来てるじゃないの…)
…案外、優しいではないか。


