ザクザクと積雪を踏み締めながら、ただ黙々と歩き続けるザイの数歩後ろを、しかめっ面のアシュがついて行く。
…ザイという男がどれほど寡黙で堅物なのかはよく分かったが…やはりこの会話が無い退屈な状態は、彼女には耐えられないようだ。
…しかも、家出娘だが仮にも貴族のレディと共に歩きながら、全く歩調を合わせようともしない。
歩幅を増すか、時折駆けなければ、壁の如き大きな背中はあっという間に遠ざかって行く。
……真後ろでこんなに、辛そうに肩で息をしているのだ。少しくらい気付いてくれたっていいではないか…。
この男、他人に関しては我関せず…と言うよりも、相当な鈍感と見た。
「………ちょっと…聞いているの?」
「…静かにしろ。…この辺りはブロッディが多い。早朝は安全だが、全く危険が無いとは言えない…」
「………やっと口を開いても、そういう事しか言えないのね。…あー…もういいわ。何も期待しないから…。………とりあえず、疲れたんだけど…」
もっとゆっくり歩いてくれない?…と、溜め息を吐くアシュ。
思いの外、自分の歩みが早かった事にザイはこの時初めて気が付いた。
会話をするつもりは無いが、ザイは立ち止まって彼女に振り返った。
頭一つ分か二つ分程背丈の低い彼女を見下ろすと…成る程、確かに疲れている様だ。
数時間歩いただけなのだが、そこはやはり体力の無い街の民。色白の顔には疲労の色が見え隠れしており、声にも最初の様な覇気が無い。
「…疲れたのか?」
「………だから疲れたって言ってるじゃないの!二度も言わせな…」
「致し方無いな。しばらくおぶってやろう」
「致し方無いとは何よ!上から目線でおぶっ………お、おぶる…?」


