目の前に、青みがかった銀髪が絹の如き光沢を放ちながら現れた。
肩よりも少し下辺りで切り揃えられたそれは、彼女の肩や首元でサラサラと揺れていた。
何処か挑む様な…夢見る乙女と言うよりも、夢を追う少年に似た瞳が、ザイを見上げる。
「……アシュメリア。アシュでいいわ。…よろしく、狩人さん」
「……………ザイだ。…よろしく…」
本の少し。本の短い間だけ奇妙な日常が続くだけだ。
気休めにもならないが、ザイは己に言い聞かせた。
未踏の地へ連れていけと言っても、よく考えてみればアシュにとって外の世界は既に未踏の地である。
日々、降り積もる吹雪や嵐により地形が変わる大地。
位置や方角を直ぐに見定める事が出来る狩人とは異なり、外に関しては素人の街の民。
勿論アシュも例外ではなく、ザイがいなければ同じ場所を行ったり来たり、たちまち迷子になる。
…その点を利用すれば、わざわざ彼女の言う通り遠くの土地にまで行かなくても済むかもしれない。
………彼女の街から一旦は離れ、時期を見てまた戻って来ればいい。
…嘘を吐くのは心が痛むが、仕方ない。
「………何か喋ったらどう?静か過ぎて暇だわ」
…洞穴で居心地の悪い奇妙な夜を明かした二人は、朝日が顔を出すと共に外へ出ていた。
昨日のアシュの馬車を襲った賊や、街の人間が彼女を捜しているかもしれない。街から近距離の場所に留まっていては危険であると判断し、早朝のまだ薄暗い空気に隠れながら二人はひっそりと街に背を向けた。


