無理矢理にでも連れて帰ってごらんなさいな。そんなことしたら…。
…そう言って、彼女はおもむろに左腕の袖を捲り、ザイに突き付ける様に掲げた。
骨と皮しか無いのではないか、と思う様な細い色白の腕。
ほっそりとしたその手首には、白に映える………幾筋もの…赤い横線が…。
「………死んでやる。…あたし、本気だから。父は知らないけど、実は自殺の常習犯なのよ。何度も思い止まって結局未遂だけれどね。………死に方なら…たくさん知ってるわ。………死ぬ前に、狩人にとってはとても迷惑な、有りもしない嘘八百を吐いてあげる。………それはちょっと嫌よね…?」
「………」
唯一の帰る場所が、彼女にとっての居場所ではなく、そして望む場所でもない。
街の外が、望むものでもある。
………少々手荒い方法を使ってでも、彼女を街まで連れていこうと考えていたのだが…そうすれば彼女は宣言通り自殺を図るだろう。目を見れば、本気かどうかなど直ぐ分かる。
……かと言って、彼女の頼みを易々と受ける訳にもいかない。
さて、どうすべきか。
(………やはり……狩人の面汚しにはなりたくないな…)
…はっきり言って、彼女がどうなろうと構いやしない。
だが狩人の誇りが汚されるのは許さない。
誇りのためならば………少々の犠牲も必要だろう。
少しくらい……。
「………街の民とは、皆我が儘なものなのか?………その態度………いつまで続くことやら…」
…溜め息を吐きながらもザイが渋々了承した事が分かると、女はニヤリと口の端を上げた。
「狩人は物分かりが良いのね。嬉しいわ」
そう言うと、不意に彼女は被っていた帽子を取り去った。


