声を荒らげて、彼女は地面に転がっていた小石を乱暴に脇に投げ付けた。
石は壁に跳ね返り、ザイの足元に転がった。
「……言うじゃないの。…ええ、そうよ。あたしは過保護な連中の手で大切に大切に育てられてきた…井の中の蛙よ。世間知らずよ。………でも、正解なのはそれだけ!…親が心配?笑っちゃうわ…!」
…眉間にしわを寄せ、女は腕を組んで顔を背けた。何度か唇を噛み締めながら、ポツリポツリと口を開いて言葉を紡ぐ。
「……父が一人いるわ。でも…あれは………実の親じゃないの…。実の親が病で死んだ後、あたしを引き取ってくれた人だけどね。とても心配性な父親よ。だけど……………心配されているのは、あたしじゃないの。意味が分かる?………あの人は、“名家存続の要になるあたし”を心配しているの!」
家の道具として使われる。欲に塗れた財産の一部となる。
人間では、ない。硬貨や紙幣と同じ………無機質な“物”として…育てられ、そして生かされている。
…そんな扱いは、もう嫌だ。
「あの家に帰っても……あたしはまたお人形さんに逆戻り。何も無い…!あたしには何も無いのよ!………自由が欲しい。どんな自由でもいいから、自由が欲しいの!………良いわよね、貴方達は…!…何のしがらみも無く…生きていけるもの…」
自由という希望そのものを求める、飢えた彼女の瞳が、ザイを睨む。その眼光を受け止めながら…ザイは苦笑を浮かべた。
「………………我々は、自由ではない。……ただ…………他に生きる術が…無い、だけだ」
「…あたしにとっては、あの家の外が自由なの。どんなに過酷でも、非情でも………………自由なのよ…。………………帰らないから。絶対に…」


