………本の一瞬だけログがこちらを振り返った気がしたが、ウルガは構わず進んだ。
離れにある塔の最上階へと登ると、そこには大きな赤い鳥が翼を広げて待っていた。
大きな黒い目がウルガを追いかけ、嬉しそうに奇声を上げる。
艶やかな赤い羽毛を撫でて落ち着かせると、ウルガはフードを被り、その背にヒラリと跨がった。
翼を広げれば全長約10メートルにもなる赤い鳥は、この砂漠の国の熱にも負けない唯一の鳥類、『サラマンダー』。
熱をその赤い羽に蓄え、外敵に火を吹いて攻撃する。決して凶暴ではないが、縄張り意識が強く、侵入者には容赦無い。
人懐っこい面もあるため、上手く扱えば良い武器にもなるし画期的な移動手段となる。
ウルガの相棒であるサラマンダーはエンという名であり、人間関係に悩むウルガにとっては唯一無二の親友でもある。
エンはウルガを乗せると、朝日が差し込む大きな吹き抜けへ方向転換した。
「………エン、朝から飛ばしてすまないな。………もう少し付き合ってもらうぞ…」
そう言って頭を撫でるや否や、エンは翼をバタバタとはためかせた。
真っ赤な羽に、真っ赤な炎が現れる。
エンは高い高い塔から地上を見据え、吹き抜けから勢いよく飛び出した。
真っ白な塔の頂上から、赤い小さな光が飛び立った。
熱風にまかれてバサバサと靡くマントの前をきちんとつめ、ウルガはエンの手綱を引いた。
塔から少し離れた上空で、一度大きく旋回すると……。
………自分がさっきまでいた巨大な建物の全景が見えた。


