俺と彼女の失恋事情。




「涼くんー……?」

彼女が目を開けた。

「何、瑠依姉さん」
「っ、うわぁっ!」

思い切り顔を近づけると、色気の無い返事をした。
まったく、ついてない。

「涼くん、何処ココ」
「俺のベッドの上」
「まさか運んでくれた、とか?」
「ご名答。よく出来ました」
「わたし、寝てたよね」
「ぐっすり寝てたね」
「今何時?」
「夜の七時。家には連絡しておいたから大丈夫」
「ありがとー……」

彼女と皮肉を交えながら話してみる。
天然なのかはわからないが、かなりのスルースキルだ。
   ・・・
「瑠依姉さん」
「なっ、何」

姉さん、をつけて呼んでみると、かなりの抵抗を示した。

「ご飯できてるけど、食べる?」

そういうと、彼女はぱぁっ、と顔を輝かせた。

「食べる! 涼くん、お料理も上手だし」

語尾にハートでもつきそうな勢いで言われ、かなり
気をよくした僕は、彼女に手を差し出した。

「頭がはっきりして無いでしょ。ほら」
「珍しく涼くんが優しいね」

珍しく、といわれ行動を振り返ってみると、
そう言われるのも不思議ではない気がした。

「そうかな。ほら、早くしないと冷めるよ?」

差し出した掌に、低体温の彼女の手が重なる。

「涼くん、いつも有難う」
「感謝なんてしなくていいから」

彼女の言葉にちょっと赤面して、
それでも何気ない風を装ってみる。

「今日のご飯、何?」

「ん? 中華料理を主にしてみたけど」

といって気づく。
彼女は中華系が苦手なのだ。

「……わたしに食べるなって言いたいんでしょー……」
「ごめんごめん。後で何か別に作るから」

「わぉ、優しいね。ありがとう」


いつもいつも僕をこんな風に優しく扱ってるつもりだろうけど、
その優しさは、凄く痛くて苦しいよ。