「た、ただいま」
 
 あたしが言うと、
 
「おかえり。遅かったね」

 腕を組んだまま答えるお兄ちゃん。

 口元は笑ってるのに、目が笑ってない。

 薄暗い光に浮かび上がる綺麗な顔。

 整ってる分、迫力があって、

 その凍るような視線にあたしは内心震え上がる。

 お、怒ってる!?

「彼は?」

「あ、こんばんわ。僕は須田さんのクラスメイトで長谷川っていいます」

 お兄ちゃんのこの黒い笑顔にも、
 いつもの仔犬のような愛くるしい笑顔で受け答えできるなんて、

 長谷川くん、あんたすごいよ。