今日のお兄ちゃんはいつもと違う。そう空気から伝わってきた。

「チィは、本当に俺でいいの?」
 
「……なんで?」

 どくん――。心臓が大きく揺れた。どういう意味?
 
「離れても意外に平気そうだったし。あんまり連絡くれなかっただろ?」

 自分が連絡しなかったことを棚に上げてそれを言うか!?

「お兄ちゃんはどうなのよ……。メールもそっけないし。手紙もハガキもみんな家族宛てだし――」

 ムキになって言い返すあたしに、小首を傾げて即答する。

「どうって。だから俺は本気だけど?」

 直視できないくらい大きく澄んだ黒い瞳が、まっすぐあたしを見る。

「大切な『妹』を『彼女』にしたことに迷いがなかったって言ったら嘘になるけど」

「え……?」

 そうなの!?
 どくん。動揺はすぐに顔に表れて、涙腺を揺さぶる。そんな不安を消すように優しく頬に添えられる大きな手。