お兄ちゃんの後ろに満月が見えた。月明かりが後光みたいで神々しさすら感じた。その形のいい唇が動く。

「前、見てた?」

「え――?」

 心配そうに眉間に皺を寄せるお兄ちゃんに言われて目の前を確認する。

「わっ!」

 気づけば電信柱に激突寸前だった。

「鈍いなぁ……。ホント」

「う……」

 お兄ちゃんからため息と共に吐き出される言葉にザックリ傷いた。まぁ、この状況。確かに、あたしの鈍さは認めるしかないよね。