久々に過ごす時間は本当に楽しくて、とても短く感じた。プログラムと時間を気にしていたお兄ちゃんは足早にいくつかの出し物を見て笑顔で帰っていった。

忙しいんだな。そんなに忙しいのに来てくれたんだな……と、兄の優しさに胸をほっこりさせていたあたしの腕を、突然誰かががしりと掴んだーー!

こんなところにいた!!
なんで一人なの!?
あぁ、もういいから、早く!
とか怒号が飛び交う中、男女数人に引きずるように連れ去られ、

あたしはここにいる……。

 何故?
 どうして、こんなとこに
 あたしはいるの!?

 事態を把握できないまま、
 
 照明の落とされた舞台。
 スポットライトが動き回って、
 場を盛り上げるドラムロールがテープから流れてる。

「ベストカップル賞に選ばれたのは……!」

 まぶしっ――。
 あたしの顔面を照らすライトに目をつぶる。

「エントリーナンバー、八番。三浦 秀哉さん、須田 千衣子さんです!!」

 体育館のステージから客席の微妙な空気を感じる。
 スポットライトに照らされてるのは、

 あたし一人。

 視線が痛いんですけど!