『男』――?
なぜかお兄ちゃんの口から出た単語に痛みを感じた。
「ほら、こんな風に。自分の男以外に――簡単に気を許す」
前髪が伸びて長い睫毛にかかってる。少し痩せたお兄ちゃんから漂う尋常でない色気。
「そ、それは――お兄ちゃんだから……」
「俺なら、いいんだ?」
悪戯に笑って、あたしの頬に触れてた指先がそのまま髪に触れた。
お兄ちゃんなら――。
耳障りなほど大きな心音。
久しぶりに会うお兄ちゃんはまるで、知らない『男の人』に見える。
何が違う?
見たことない新しいシャツや家とは違うシャンプーの香りに、あたしの全身が警戒サイレンを鳴らしていた。
これ以上一緒にいたら……ヤバい気がする。
「さっき、お兄ちゃん――『俺の女』って言ったよね?」
ほら、勝手に頭の中の言葉が飛び出した。


