そのまますいっと目線があたしに移った。

 あたしの小さな心臓が生まれたての小鹿のように震える。

「何下手なナンパにひっかかってんの?」

 呆れたように見下ろして、ため息をつくお兄ちゃん。まだブラック降臨中!?

 低い声にビビりながら
 言われて気づいた。

 あれナンパだったのか!

「は、初めてだったし。しょうがないじゃん」

 口を尖らせて、情けない反論をする。恥ずかしながら初めての体験。想像と全然違って、押し付けられる好意の怖さを感じた。

 思い出して体が震えた。

「……大丈夫か?」

 あたしの頭に大きな手が乗せられる。