「まだ忙しいし――当分、大学泊まるよ。八重子さんにも、そう言っといて」 見たことないほど 冷たい笑み。 表情のない声で 言い放つ。 「彼氏に、よろしく」 口の端を不自然に上げてそれだけ言うと、踵を返して階段を上がっていく。 「え、あ……。お兄ちゃん!?」 急激な態度の変化に、動揺を隠せなくて 思わず呼び止めた。 少しでいいから こっちを見てほしくて。 やがて一度も振り返ることのないまま、階上に消えたお兄ちゃんの姿。 まるで拒絶するように。