パソコンにCD-ROMを挿し込み、ハードディスクにコピーする。

「母が亡くなるまで、母を喜ばせるために勉強ばかりしていたんです。その息抜きとして遊んでいたパソコンも、今よりもあの頃の方が数段スキルがありました。それ以外、やることがなかったですし。
 小学生2年生に曖昧な感覚などありませんから、すべてはマルかバツだけです。当然、子供が選ぶのは、マルです。
 だから、すべての物をマルにしてやろうと思って作ったのが、強制的にマルを選択するウィルス―――この、チョイスです」

「ふうん」
 と、何の説明をしているのか理解していないにも関わらず、瀬戸さんが曖昧な返事をする。
「ハハハ、それですよ。その返事をすべて、強制的に―――分かった―――と言わせるわけです」

 僕はコピーしたプログラムを、思い出すように眺める。
 よくもまあ、あの年齢でこんな物を作ったものだと、我ながら感心する。


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