僕は、手を合わせる。

 母さん・・・僕はもっと早くここに座り、語りかけるべきだった。
 でも僕は、僕自身が母さんを死なせてしまったのだと、その負い目から合わせる顔がなかったんだ。

 ごめん、母さん。

 僕は立ち上がると仏壇の引き出しに手を伸ばし、母が亡くなった直後に隠した手の平サイズのケースを取り出す。

「行ってくるよ」
 そう言い残すと、僕は仏間を出て自室に駆け上がり、パソコンを手に玄関から飛び出す。

「お待たせしました」
 そう言って助手席に乗り込むと、瀬戸さんが後部座席を指差す。意味が分からずその指先を見ると、既に誰かが乗り込んでいる。
「拓郎!?」
「まあ、あれだ。
 俺的にも、あのままだと不完全燃焼だから、お前も引き摺ってでも連れて行こうと思って、な」
 照れ臭そうに、鼻の下を指で擦りながら苦笑いする。

「じゃあ、行くわよ!!」


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