「ありがとうございました。ブログ・・・読みます」
「うん」

 車のドアを閉め、僕は目の前にある扉を開く。落ち込んだ時、逃げ込む場所はいつもモモエだ。

「ただいま」
「おかえり」
 オーナーが迎えてくれる。
 いつもと変わらない。
 そうだ、何もなかったことにすれば良い。
 指定席に座り、オンラインゲームに没頭する。
 それが、唯一僕にできることだ。

 右足を一歩踏み出した僕の耳に、信じられない言葉が飛び込んできた。

「幸平君、キミは帰ってきたんだ。阿部さんが苦戦してるのに」

 心臓のど真ん中を射抜くような言葉。
 振り返ると、そこにはZさんの姿。

「Zさん、なぜ、知っているんですか!?」
「なぜって、阿部さんの相談相手は私。最初のプログラムを組んだのも私だから」

 そうか。
 システムトラブルに関心を持つ友人とは、Zさんのことだったんだ。


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