「さて、始めるとしましょうか」
 阿部先生が沈黙を破り、目の前にある端末を操作し始める。それと同時に、車から持ち出したカバンからノートパソコンを取り出して端末と並べる。

「なるほど、やはりそうですか・・・」
「何が、そうかなんですか?」
 独り言のように呟く声に、僕は素早く反応する。
「いえ、システムトラブルを起こしているウィルスのことです」
「ハッキングのですね」
 と、瀬戸 麻美が身を乗り出す。

「そうです。が、これは正確にはハッキングではなく、クラッキングです。ハッキングというのはですね、本来はシステムの不具合を―――」
「先生、今は授業してるわけじゃないから」
 阿部先生の話しを拓郎がさえぎる。確かに、長々とハッキングの説明を聞いても仕方がない。

「ふう、意外とみなさんは気が短いですねえ」
 いや、時間が無いのに、あんたが思い切り脱線しようとしたんだろ。


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