扉が閉まると同時に、拓郎が空いている椅子に座って毒を吐く。
「何だってんだよ。自分たちのミスを、まるでダメだった時は俺たちのせいみたいに言ってよ。くそ、面白くねえな!!」
「まあ、このまま放置してたら、俺たち全員、放射能を被るんだぞ。やらないと仕方ないだろ」

 拓郎をなだめながら、瀬戸 麻美が呟いた言葉を思い出す。
「瀬戸さん、さっき実家がどうとかって聞こえましたけど、原発の近くなんですか?」
 瀬戸 麻美はその場にうずくまり、口を両手で覆う。そして、そのまま顔を隠すようにして、か細い声で話す。
「原子力発電所があるのは、私の実家がある隣町。両親も妹も、そこにいるの。
もし・・・もしも放射能漏れなんて起きたら、至近距離で浴びてしまうわ」

 僕は次の言葉が見付からず、瀬戸 麻美の背中をただ見詰めることしかできなかった。


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