玄関ホールで5分ほど待っていると、エレベーターからスーツ姿の男性が現れた。その着こなしや、特有の他人を値踏みする視線は、その人がエリートであることを物語っている。

「お待たせ致しました、阿部 寛一様ですね。その学生の方々は・・・」
「この子たちは、私の助手のようなものです」

 一言二言挨拶程度の言葉を交わすと、その男性は「こちらです」と言って、僕たちをエレベーターの方に誘導する。
 ビルは12階建て。僕たちは11階に向かうらしい。

 音も無く上昇するエレベーターは、直ぐに11階に到着する。扉が開くと、目の前に見るからに頑丈そうな扉が現れた。
 男性は懐からカードを取り出すと、扉に設置されたリーダーに読ませ、更に暗証番号を入力する。
「どうぞ、中にお入り下さい」

 阿部先生の後に続いて、僕たちは扉の中へと足を踏み入れる。


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