阿部先生の車は意外にも外国製のジープで、先生の容姿とは相容れない仕様だった。
「どうぞ、乗って下さい」
 僕と瀬戸 麻美のやり取りを見ていた拓郎は、ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべて素早く助手席に乗り込む。お陰で僕は瀬戸 麻美と後部座席で並ぶことになり、嬉しさ以上の緊張感を覚えることになった。

「先生、何でジープなんですか?ぶっちゃけ、ぜんぜん似合いませんよね」
 拓郎が聞き難いことを、真正面から訊ねる。それには阿部先生も苦笑いして、頭をかいた。
「ははは、ジープだとですね、普通の車では行けない場所に行けて、非常に便利なのですよ」

 普通では行けない場所に、この先生はいったい何をしに行くんだよ。
 僕はトランクから後部座席に突き出す、見たことも無いような巨大アンテナの先端を触る。

「出発しますよ」


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