拓郎の父親が?
 意外だ。あんなに拓郎のことを、「我が家の恥」的に扱っているのに。

「阿部先生、先生はどうして防衛省のホームページにハッキングなんてしたんですか?」
 僕の質問が予想外だったのか、阿部先生は一瞬言葉に詰まる。しかし、緩い笑顔で話しを始める。

「世間で言う所の、いわゆる趣味ってヤツでしょうか。いえ、趣味というよりは、挑戦なのかも知れませんね」
「挑戦・・・というと、防衛省にですか?」
「いえいえ。
 元々コンピューターが好きで、学生の頃から自宅にこもり、オリジナルのプログラムを作ったり、ハッキングをしたりしていたのですよ。
 あ、これは内緒にしておいて下さい。
 そんな時でした。ニュースで、驚くべきことを目の当たりにしたのです。私が防衛省のファイアウォールさえ突破できずにいたのに、米国の、しかも国防総省のメインコンピューターに侵入した人がいると。


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