翌日の昼休憩、昼食をすませた僕は、昨夜決めたように古典準備室に向かう。
 突然立ち上がって教室を出て行こうとする僕を、拓郎が呼び止めた。

「どこ行くんだ?」
「古典準備室」
 首だけ回して振り返り、とぼけた表情の拓郎に答える。拓郎が、続けて問い掛けてくる。
「何しに?」
「何しにって・・・勉強に決まってるだろ」

 拓郎に事情を説明する時間が惜しくて、適当に答える。拓郎は怪訝そうな表情を見せるが、行き先が古典準備室なのでヒラヒラと手を動かした。
 僕はそんな拓郎に軽く手を上げ、教室を出て古典準備室に急いだ。阿部先生は授業中以外の時間を、インターネットに費やしていることを僕は知っていたからだ。

 古典準備室は校舎2階、西側の突き当たりだ。僕は階段を1つ飛ばしで下りると、速足で廊下を急いだ。


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