最後に洗濯したのは土曜日。ここ数日の、父が着ていた服が無い。
 ほとんど顔を合わせることはないし、会わない日だってある。それでも、帰宅しないという日はなかった。
 僕ならばともかく、母と暮らしたこの家を父が捨てるとは思えない。となれば、父は会社から帰っていないということだ。

 システム管理なんて、帰宅出来ないほどに忙しい部署なのか?
 気にはなっても、でき損ないの僕には成す術が無い。職場の電話番号は知らないし、電話してもまず出ることはないだろう。

 僕は首を左右に振ると洗濯機のふたを閉め、風呂場の扉を開けた。

 母が生きている時には、考えられないことだ。父の帰宅時間はもっと早かったし、帰宅しないなんてことは有り得なかった。全ては、あんなモノを僕が作ってしまったことが原因だ。全てのバランスを崩したのは僕だ。


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