放課後、チャイムと同時に教室を飛び出し、僕はモモエに急いだ。電話の内容を確認することもあるが、瀬戸 麻美の誤解を解かなければスマートフォンが使えない。

 駅に到着すると、タイミング良くホームに滑り込んで来た電車に乗りモモエに向かう。
 関係ない話だが、モモエという店名は、オーナーが山口 百恵の熱烈なファンだったからだそうだ。誰だよそれ?

「ただいま」
「おかえり」
 モモエの店内を真っ直ぐに進み、いつもの席に向かう。今日もZさんは、指定席に座っている。

「こんにちは」
 Zさんは僕を横目でチラリと確認し、軽く頭を下げる。どうやら今は忙しいらしい。普段から無愛想だが、集中している時は更に愛想が悪い。

 カバンをテーブルの横に置き、座りながらキーボードを叩く。
 画面が切り替わる時間を利用し、駅前の自動販売機で購入したスポーツドリンクのキャップを回した。


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