「オヤジが、いつものように俺を見下して言うんだよ。
 三流高校の阿部っていう三流教師が、こともあろうに防衛省のホームページをハッキングした、ってな」

 そう言えば最近、防衛省のホームページを書き換えたというニュースを見た気がする。あれが、阿部先生の仕業だったのか?

「まあ、三流高校だから仕方ねえよな」
 そう言って自虐的に笑う拓郎の表情には、無意識だろうが悔しさが滲んでいる。拓郎も僕と同じで、エリート家族の中でクズ扱いされている。偏差値が高ければ一流の人間で、それ以外は負け組という考え方の方がよほどクズだと思うが。

 でも、拓郎はわざと成績を落とし、頭が悪いフリをしているようにしか、僕には見えない。

 それにしても・・・ハッキング、これがインターネット社会の弊害か。
 いつでもどこからでも、あらゆるものにアクセス可能な環境は、常にリスクを抱えている。


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