「なあ、教えてやろうか?」

 1時間目が始まって間も無く、騒がしい教室の中で拓郎が言ってきた。その意地が悪い表情から、ただのウワサ話などではないことが分かる。

「何をだよ?」
 ぶっきらぼうに応える僕に、顔を近付けて拓郎が含み笑いをする。
「あのな、昨日オヤジが帰って来てな、俺を見てため息混じりに言うんだよ。三流高校は、教師も三流だなってよ」
「どういう意味だ?」
「まあ待て、オヤジの話しには続きがあるんだ」

 拓郎は周囲に気を配りながら、「一応は秘密だからな」と前置きをして話し始める。
「今日の1時間目、何で自習になったか知ってるか?
 阿部は、警察に出頭してんだよ。マヌケだよなあアイツ」

 そう言うと、拓郎は大口を開けて腹を抱えて笑う。
 確かに、今朝の慌てた様子は普通ではなかった。しかし、僕には状況が掴めない。何故、一体どんな理由で警察に出頭命令を受けたのか。


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