電車を降りた僕の足は、無意識にモモエに向かう。扉を開け一番奥の席を見ると、食事にでも行っているのか珍しくZさんの姿が無い。

「彼女なら今はいないよ」
 僕を見るなり、オーナーは僕の思考を見透かしたように言った。
「オーナー、Zさんて一体何者なんですか?」

 オーナーはお気に入りのカップでコーヒーを啜りながら、少し笑みを浮かべて答えた。
「さあ・・・ね。でも、浩平君が感じているままの人だと思うよ。頼まれたことは確実に実行するし、それ以上のことはしない。そんな人だよ」

 その時、僕の背後にある扉が開き、ジャージ姿のZさんが入って来た。
「こ、こんにちは」
 僕の顔をチラリと見て、Zさんは無言で軽く頭を下げる。いつもと変わらない応対。そして、指定席に向かって歩いて行くと、座ってパソコン画面に向かった。

 違う。
 Zさんが、あんな悪ふざけをするとは思えない。別の誰かが・・・


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