「柊(しゅう)だよ。」

柊は少し大きめの声を出した。

「そうなんだ。柊って書いてシュウって読むんだ。うち初めて知ったよ。」

春花は感心したように言った。柊は呆れたように息をはいた。

「取りあえずさっさとセンタータウンに行くぞ。」

柊はおもむろに指を口にもって行った。

ピーッ

口笛の澄んだ音が空に響いた。

「?」

春花は柊の口笛の意味がわからず首をかしげた。5秒もかからないうちに空に黒い影が見えて来た。

「何、あれ?」

「アルミスだよ。」

柊が空を見たままで答えた。
「アルミス…。」

春花はうわ言のように呟いた。まるで、聞き慣れないその言葉をゆっくりと味わっているようだ。

ストン

微かな音をたててアルミスは芝生の上に着地した。

アルミスは透き通るような美しい羽根を持った鳥だった。

「アルミスはこのスプリングボックスで一番多い移動方法だ。スプリングボックスの中の生き物で一番早いんだ。」

「こんなにカワイイのに?」
アルミスのカワイイ姿からはそんなにも早いなんて想像もできない。

「まぁ、乗ってみればわかるだろ。」

そう言って柊はアルミスの背中に乗った。

「アルミスを乗りこなすのは難しいから、おまえは前に乗れよ。」