「…それからね、
お父さんが買ってくれたワンピース着たら、
撮ってお父さんに
送ってあげることにしたんだ」


そんな報告をしたら、
ヒオカ先生は、にっこり笑った。

「そう!それはお父さんも喜ぶよ」



ヒオカ先生は、
あたしの家族の話に
いつも親身になってくれる。

その中でも、
いいことの方の話をしたら、
親身に加えて嬉しそうに
聞いてくれるから、

あたしももっと
話をしたくなるんだ。




一時は、
着ないでおこうかとまで思った
父からのバースデープレゼントの
ワンピース。



やっぱり思い直して、
着ることにした。



日がたつにつれて、
あたし自身冷静さを
取り戻してきたのかもしれない。


でも一番は、なにより
ヒオカ先生の存在があったから。


父への気持ちを聞いてもらって、
あたしは随分楽になった。


おかげで、
落ちつきを取り戻せるようになった。




ワンピースを袋から出して
大事にかけてある。


ワンピースに合いそうな
靴とバッグも用意した。


ついでに、
勢いで着拒にしたアドレスも
解除しておいた。



今まで通りの関係ではいられないし、
まだまだ胸の奥に、
複雑な気持ちが残ってはいるけど、

それでも、



「今は、大事にしようと思ってる。
あのワンピースは、
お父さんの優しさの結晶
みたいなもんだから」


これだけは、大事にしなきゃ、
ないがしろにしちゃ、
バチがあたるでしょ?



「そんな風に思えるようになったのは、
ヒオカ先生のおかげだよ。
ありがとう」