「…ケーキ?」


ヒオカ先生は、眩しそうに
明るい液晶をのぞいた。

先生のメガネに、
昨日写した
父からのバースディケーキが
うつってる。




「お父さんに会ったんだ。昨日」


「…そう言えば、
ワンピース買ってもらうって
いってたよね。

どうだった?
いいの見つかった?」


突然脈絡もなく
ケータイ出して
話し出したあたしの話を

ヒオカ先生は
律儀に聞いてくれてる。


やっぱり優しいな、この人。



ふっと昔を思い出した。

夜中に千夏姉のアパートから、
コンビニに買い出しに
いく途中のこと。



「うん、それでね、
…お父さん、
再婚するんだって。

赤ちゃんも産まれるの。
おめでたいでしょ。

あたしのまわり、
幸せな人がいっぱいで
うれしい♪」


めいっぱい明るく言った
つもりだったけど、


暗くて表情は
はっきりしないけど、

あたしの顔をじっと
見つめるヒオカ先生の顔は
困惑している。



「…なら、
どうしてそんなに
悲しい顔してるの?」