あたしは答えられなくて、
うつむいた。

理由は、
あたしにもわかんない。



ヒオカ先生は困ったように、

「とにかく帰ろう?送るから」

って言いながら、
あたしの肩に手を置いた。



その手が優しくて、

あたしは
もっと意地になって
首を横に振った。



「…何かあった?」


「…」


無言のまま、あたしは
肩に触れるヒオカ先生の袖を
そっとつかんだ。



「…どうした?
今日ちょっと
様子変だったから、
気になってたんだ。

話聞く時間なかったし…」



男の人の
心配した静かな声って、

安心感あって、
ドキドキする。




「そうそう、
ヒオカ先生に
見てもらいたくって」


あたしは
ヒオカ先生の袖から
手をはなして、

わざと明るい声で、
ケータイを取り出した。