そう、誰と一緒になったって、
父があたしの父であることに
変わりはない。



だけど、
次の言葉を聞いたとき、
あたしの心は凍りついた。




『冬には、
子どもも産まれるんだ』



父の、
こんなに嬉しそうな顔は
見たことがなかった。



そして父は付け加えた。


『もちろん、これからも
シイナの父親であることは
変わりないから。

相手にも、シイナのことは
話してあるし、
理解してくれてる。

これからも、
今までと同じように
ずっと会いたいし、

父親として、
できる限りのことは
していくつもりだ』



とても真剣に言ってくれた。


終始あたしは
笑顔を顔に張りつけていた。


父の言葉はちっとも
耳に入ってこなかった。



突然、父が
遠くなってしまった、

そう感じた。





父と別れて家に帰ったら、

あたしの持ってる紙袋を見て、

『着て見せてよ〜』って
母はせがんだけど、

とてもそんな気になれなくて、
紙袋のまま、
クローゼットの中に押し込んだ。


早く取り出して、
ハンガーにかけておかないと
ワンピがシワになってしまう。



けど、もしかしたら、
千夏姉の結婚のときにも、
着ないかもしれない。


そしたらもう、
着るチャンスもないだろう。