あたしがケータイの画面を
のぞきながら指差すと、

ヒオカ先生も前屈みになって
画面に近づいた。



ヒオカ先生の息がかかって、
一瞬かすかに揺れた自分の髪に
気をとられた。


…近い。




「何色のバラ?」



ヒオカ先生の質問に
視線を上げたら、
先生の目は画面のバラしか
見てなかった。

興味はバラだけっぽい。


あたしは、
髪を耳にかけながら
ゆっくり姿勢を正して
ケータイから顔を離す。


「…え、っと、
それがわかんないんだ」


「わかんない?」


「店員さんは、
咲いてのお楽しみ、って」


色んな種類のミニバラを仕入れてて、
その中で、まじってしまって
種類がわかんなくなったのを
特別に安くして売ってる
って言ってた。


「そっか、でも
それはそれで楽しみだね。
どんな色の花が咲くのか」


「うんっ。すごい楽しみ!!
バラと言えばやっぱ赤かな?!
でもピンクもかわいい♪
先生はどう思う?」


って尋ねたら、

ヒオカ先生は、
あたしの顔をじっと見つめて
優しげににっこり笑った。



「…?どうかした?」