4月。



あたしは第一志望の大学の門を
くぐった。



あたしの足どりは最高に軽い♪


スキップしたいくらいだわ。




ここまでたどり着くまでに、
ほんとうに何度も
心が折れそうになった。




だけど、
ようやくここまできたの。




『これからもよろしくね』

合格発表のとき、
母はすごく喜んでいた。





暖かな春の陽気。


甘い花の香り。


あたしの心は弾む。




はやる気持ちをおさえて
慣れないハイヒールで駆ける。



ワクワクする。



あたしの目指す
白衣の背中が見えた。



声をかけようと
大きく口を開いてためらった。



もう、
“先生”だとおかしいかな。



これからは、何て呼ぼうかな。


実は何個か候補があるんだよね。


気に入ってくれるといいけど。





あたしの足音に振り返った。



こっちを向いて驚いて、
眼鏡を押さえて、
それから笑顔になった。



春の日差しと、
むずがゆい風になびく
白衣に目を細めた。




くらむほど眩しくて
あたしはまた恋をするのだ。