「今さらでもヒオカ先生なら、
大学院に行ったって
大丈夫だと思う。

教授が来いって言ってくれてる
くらいだし。

自信持ってよ。

バラだって
他の人に代わったって
許してくれる。

行ってムリなら、
そん時に考えたらいいじゃない」



あたしの励ましに、
ちょっとは気が晴れたのか、

ヒオカ先生は少し笑って
冗談っぽく言った。


「…大学院に行ったら、
とんでもなく貧乏になるんだよね」



「ヒオカ先生、
もともと贅沢するタイプじゃ
ないじゃん。

だからどうとでもなるって」



あたしは笑った。


いつの間にか珍しく
前向きな気持ちになっていた。




「ま、あたしは、
先生が先生を続けても、
大学院生になっても、
どっちでもいいんだけどね。

あたしが高校を卒業すれば、
ヒオカ先生がどこの誰でも、
大声で好きって言えるんだし」



「佐野さんみたいに、
若くて可愛い子に、
俺なんかもったいないよ。

大学行ったら、
出会いなんてたくさんできる。

佐野さんならすぐに
良い人に出会えるよ」



そんなことあるはずないでしょ。

でも、
挑発するように言い返した。



「うん、そうかもね。

あたし頑張って磨いて、
イイ女になるつもりでいるから」



線香花火が力尽きて
先端の光が落ちて
ふっと暗くなった。



「あーあ、終わっちゃった」



名残惜しくて見つめ合った。