**大学の
オープンキャンパスで会って、
東京に行かないかもって思って
うれしかった。

好きだと言ってくれて、
ほんとうにうれしいよ。

自分でも思ってた以上に…、
佐野さんが、
俺は…」



ヒオカ先生は、
ためらいながら、

それでも決心したように
あたしと顔を合わせて、



「好きなんだ」



真剣な顔で、
はっきりそう口にした。




あたしは信じられない気持ちで
数回瞬きをした。



体中に喜びが駆け巡って、
熱くなって震えた。




だけど、ヒオカ先生は、
晴れ晴れとした表情ではなかった。



とたんに、
打ちつけられるように、
舞い上がってしまった自分に
がっかりした。



ヒオカ先生は、
伏せ目をするような瞬きをしてから
もう一度あたしの顔を見直した。


陰った瞳で、息を吸い込む。



「…だけど、教師を選んだ以上、
気持ちだけで突っ走る決心が
つかなかった。

リアルに誰かを守りたいと思ったら、
仕事は、基盤になるものだから
どうしても投げ出せない。

隠すのも下手だ。


…これが、
俺が悩んだ末に出した答えなんだ」



少しの沈黙のあと、


「佐野さんの気持ちには、
答えられない」



やるせなさの募った声で、
きっぱりと終わらせた。




しばらく黙ったまま見つめ合った。





あたしは、唇を横に引き上げて、
仕方なく微笑んだ。



「…やっぱり。
そう言われると思ってた」