そんなあたしに
ヒオカ先生がメールで提案した。



『東京の大学のオープンキャンパス
行くって言ってたよね。

俺もその日東京行く。

その方がちゃんと話せそうだから』



東京なら、
人目を全く気にしなくていい。



オープンキャンパスが
終わってから会おう、
ってことになって。


大学の近くで待ってる、って。





大学の敷地内で見つけた
ヒオカ先生は、

することがないんだろうな、
掲示板をぼんやり眺めていた。



あたしはそんなヒオカ先生を
離れた場所から見つめた。



以前は触れた唇も腕も、
一線引いたように
遠くなってしまった。



押したのも引いたのも、
そういやあたしだけど。



線引きながら、
個人的に色々あったせいで、
すぐあやふやに
なっちゃったけど。



あげくあたしが勢いで
告り逃げなんて
しちゃったもんだから、

ぐだぐだな
あたしとヒオカ先生の関係。



このままじゃダメ。



クリアにしときたい、
ってことなんだろう。



受験本番を前に、
モヤモヤするくらいなら、
ハッキリさせときたい。


あたしのためでもある。



だから覚悟を決めてここに来た。



ヒオカ先生の話を受け入れる
覚悟と、

“先生”を
好きになった生徒として、
すべきことへの覚悟。



名残惜しく見つめながら
あたしは意を決して
足を前に踏み出した。




ヒオカ先生は私服。

清潔感あるけどやっぱ地味。


地味さはあたしも負けてないけど。



どっからどう見ても
大学生みたい。



思わずクスクス笑ってたら、
ヒオカ先生があたしに気づいた。