しばらく無言のあたしに、
ヒオカ先生は
繰り返し尋ねてくる。



『佐野さん、どうかした?』


ヒオカ先生の声が
耳から身体の奥にしみ込んで、
あたしは唇をかみしめた。



〔○○さま、
内科外来までお越し下さい〕


ちょうど流れた院内アナウンスに
ヒオカ先生は気づいたようだ。



『佐野さん、今、病院?』



うなずいてから、口を開いた。




「ヒオカ先生…助けて」



涙なんて出てもないのに、
泣き声だった。



こんな声が、自分から、
出るなんて。