軽トラの二人は、
首にタオルを巻き軍手をはめて

スコップを手に
バラの花壇に入っていった。


あたしは、
女性の背中を追いかける。

女性の名は、



「錦織先生!!?」



声に振り返る。

よかった来た。


待ってたよ、ヒオカ先生。




「あらぁ〜、ヒオカくん。
お久しぶりね。遅いじゃないの」

女性〔錦織先生〕は、
懐かしそうに
ヒオカ先生に手を振った。



「錦織先生、どうして、ここに…」


思った通り、困惑してる。

ヒオカ先生の
いつもの静かで賢く整然とした顔に、
ハテナがたくさん浮かんでる。


バラの花壇に駆け寄って
ポカンと口をあけたまま、

あたしと“錦織先生”を交互に見て
状況を飲み込もうとしている。



「この子、佐野さんに
頼まれたからね」


錦織先生がそう言うと、
ヒオカ先生の驚いた顔が
あたしに向けられた。


そして、そういうことか。

表情がそう言った。

瞬時にあたしの意図が
汲み取れたみたい。


そういうことよ。

あたしは、
首をすくめて微笑みかけた。



錦織先生。


ヒオカ先生の前任者。

ここにバラを植えた教師。

実家がバラ農家。

つまり、プロだ。


夏の植え替えが
難しいのはわかった。


でもプロが手を貸してくれたら…。