”ただ、愛されたかった…”

 電話がなる…。

 「はい、ありがとうございます。

 ユリ美容室でございます。」

 「先生、今から、パーマ入れて(予約)

 いいですか?」

 
 夕方、6時。パーマの受付時間は、

 終わっている。

 電話は、瑠理が、受けたのだった。

 瑠理は、電話が苦手。

 最初の決まり文句の

 「ありがとうございます、・・美容室で

 ございます」

 も、舌がまわらない。

 先輩達が、スラスラ言えるのが、

 不思議だった。


 「誰からの電話か、聞いて頂戴」

 先生が、お客様のお仕上げを、

 しながら、瑠理に言った。


 瑠理は、受話器を握り、

 「誰ですか?」


 先生が、急いで飛んできた。

 叱られた。

 お客様に向かって、「誰ですか?」

 確かに、よくない。


 瑠理、16歳だった。