瑠理と母親は、久しぶりに、いろいろな話しをした。



 ずっと昔の事、頭の隅の方で、モヤモヤしていた事……。

 あの事実を、知ってから、何かが変わってしまった……。

 目に映るものに、色が無くなって……。



 今更、言ってどうなる事ではない…。

 ただ、一言謝って欲しかった…。



 「お母さん、どうして、オーディションの合格通知、

 私に内緒で、破いたの!」

 
 どうしても、この事だけは、蒸し返したかった。

 この話しだけは、どうしても、聞きたかった。



 「何を、そんな古い話し言ってるの?」

 母親は、何を、今更って感じだった。


 「私が、一番真剣だった事なの!どうして、卑怯なやり方したの?」

 どうしても、引けない。これを、聞かなきゃ前へ進めない!


 「知ってるよ。あんたが、歌がどれだけ好きか…。だから、嘘をいったんだ。」


 「歌手になる夢、反対だったから?」


 「そうだよ。あんな世界に行って欲しくなかった!

 あんたの人生……私が…この手で、握りつぶした……悪かった………。」

 
 母親が……そう言った。


 初めて、母親が、降りてくれた………。

 謝ってくれた…………。


 何も、変わりはしない……でも、この言葉が、

 欲しかった。