”ただ、愛されたかった…”


 一人暮らしをするようになっても、

 母親との関係は、うまくいかなかった。

 母親の瑠理に対する執着は、相変わらず続いていた。

一人暮らしをしたからって、変わるものではない…。

 もう何年もそんな関係が続いている。



 母親は、電話で、自分の愚痴を言い続ける…。

 瑠理が、自分の話しをしようとしても、一切受け付けてもらえない。

 とにかく、自分の闇を話しまくる。

 まるで、毒でも飲まされている感覚だ。

 母親との電話の後は、いつもいつも泣きたくなる。

 そして、とても、孤独な気持ちになる…。

 「ご飯食べてるの?」なんて、そんな心配された事がない。

 少しでいいから、私の気持ちとか、考えて欲しかった。

 母親の毒のある言葉で、私の心は、いつもいっぱいだった…。

 
 習い事をしたりすれば、その時は、集中できる。

 でも、何か違う…気持ちが晴れるのは、最初だけ…。

 何故か、心からの楽しい気持ちになれない…。




「ねぇ、瑠理、この部屋…なんか…良くないと思う…」

 夏美が、久しぶりに瑠理の部屋に遊びに来ていた。

 夏美は、既に結婚していて、子供も一人いる環境になっていた。

 その日は、子供を、自分の母親に預けてきたらしい。

 夏美の義理の姉は、幽霊が見えてしまうそうだ。

 そういう事の影響で、夏美もそちらの世界にはまっている。


 「変な事、言わないでよ。」

 瑠理は、内心嫌な感じがした。

 実は、瑠理自身、この部屋に一人で居るのが、怖くなっていたからだ。

 最初は、そんな事なかったのに、最近何かを感じてる…。

 金縛りにも、毎晩のようにかかっていた。

 もともと、金縛りとかかかりやすい方ではあったが…。

 瑠理自身、霊感とか、中途半端に強い方である。

 そんな時に、夏美から言われ、本当に怖くなった…。

 夜も熟睡できなくて、体もだるい…。



 

 瑠理は、引っ越す事を決心した。

 今の部屋は、ワンルームで、本当に狭い。

 もう少し、広い部屋にしようと思った。

 安らげる場所が、必要だった。