”ただ、愛されたかった…”

オーディション会場…。


 瑠理の母親も一緒に来ていた…。

 「田舎者が、あんな大都会に行くのは、危ないらしい。」との事…。

 何故か、母親は、着物を着ていた。

 瑠理のオーディションではなくて、母親のオーディションみたいだ…。



 会場には、関係者の人と顔見知りの人(何回か、受けに来てるんだろう)

 オリジナル曲を練習する人、さまざまな人がいた。

 
 最初にカメラ撮りのテストがあった。

 何故か、瑠理が、一番だった。

 いろいろ注文される。「笑ってください!」とか。

 思いっきり笑ったら、笑いすぎと注意された。


 その後、一人ずつ審査員のいる部屋に呼ばれ、オーディションが、始まった。

 
 瑠理は、書類審査の時に送ったデモテープとは、全く違う選曲をした。

 自分の中にある二面性を評価してもらいたかったから…。


 歌う前にも、審査員の人が、この曲でいいのか、聞いてきた。それぐらい

 全く違う曲だった。

 カメラ撮りは、うまくいかなかったけど、歌は、まあまあの出来だと思った。


 待合室で、母親が待っていた。

 瑠理の母親以外の人も数人いた。

 「どうだった?」

 なんて、聞いている。

 瑠理の母親は、下を向いて眠っていた…。





 場慣れしている感じの子も多かった。


 合格の人には、合格通知が届くらしいとの事だった。


 
 その日の瑠理の気持ちは、すごい充実感があった。

 受かる受からないは、別として、なんか満たされていた。

 自分のやりたかった事を、試してみた日だった。

 素敵な人も多かったから、自信はないけど、手応えみたいなものを

 感じていた。