美鈴のお母さんと俺は 受付の近くにある 広いフロアに移った。 「…実はね」 美鈴のお母さんは 重たそうに口を開いた。 「あの子、今、全然まともな治療をしてないのよ」 「…え?」 治療をしてない? じゃあいつも美鈴の腕にある点滴はなんだ? 「本当は、抗がん剤治療をするつもりだったんだけどね…美鈴がどうしても嫌だって言ってね、今は癌の痛みを抑えるための点滴だけ打っているの」 俺は体から力が抜けていくのがわかった。