…私の、死んだ、お母さん?
何をいってるの、ひろ兄。
お母さんは生きているじゃない。
いつも私たちの為に遅くまで働いてくれているじゃない。
この前だって、忘れ物したって、朝に家へ帰ってきたじゃない。
それから、行ってきますって言ってまた家を出て行ったじゃない。
そうよ、私のお母さんは生きているのよ。
私のお母さんは……
だって…だって、あれは私のお母さん、でしょう?
言いたいことばかりが頭の中に浮かんでは消えて、それでもとめどなく生まれて、溢れてしまいそうなのに、喉がかさついて、声が…出てこない…。
口をパクパクさせながらひろ兄を見ていると、私の心の内を察した様に口を開いた。
「麻衣、よく聞くんだ」
私はごくりと喉が鳴りそうなくらいに唾を飲み込んだ。
嫌だ、怖い。こわいこわいこわい…聞きたくない…
聞いてしまったら、私がどうにかなってしまいそうで…。
だけど、それでも真実を知りたくて…ひろ兄の顔から目がはなせなくて…
私は、どうしたらいいの……?


