ガチャ…

玄関の開く音で目が覚めた。
いつの間にか寝てしまったみたいだ。

すると、コンコン、と部屋のドアがノックされた。
「麻衣、いるか?」
「うん、いるよ。どうしたの?」

ドアを開けるとひろ兄が入ってきた。

「ちょっと、話があるんだけど…いいか?」
ひろ兄はベッドに腰をおろして行った。
「何?話って」
そう言ったところで気がついた。
「あれ…?この匂いって……」
いつも敬人さんからする、あの懐かしい匂いがひろ兄からした。

「もしかして、敬人さんと会ってたの?」
「あぁ、麻衣は鋭いな」
ははっ、と言ってひろ兄は笑った。
そして、急に真顔になった。