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本当は“あの時の地味子”だって、わかっていたんでしょう?

わからなかったなんて、ほんのあいさつ程度でしょう?

「それでは、失礼します」

早いところ、彼から逃げたかった。

「あ、待ってよ」

彼に引き止められてしまった。

何よ…。

私に用事なんてないんでしょう?

「少しだけ話がしたいんだ」

そう言った平林くんに、
「忙しいので、やめてもらえますか?」

私は言い返した。

「いや、ほんの少しだけでいいんだ」

彼の手が私に向かって伸びてきた。